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COLDSLEEP

まどるdが趣味でかいた小説をだらしなく垂れ流す場所


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3

「来るぜ」
 彼が言う。たくさんのプレゼントを背中にしょってると。
「分散型サービス拒否妨害(DDoS)攻撃か」
 第三者にハッキングを行い、これに目標へと大量のデータを大量に送信し、過負荷を与えて機能を停止させるやり方だ。かつて、有名な企業、ソニーという会社がハッキング組織、アノニマスにDDoS攻撃を受け、更には一億人にも及ぶ個人情報が流出したという話は有名な話だ。
 それだけじゃない。それ以前にもサイバー戦は始まっていた。だから、アメリカはサイバー攻撃を戦争行為とみなすようになったし、陸、海、空、宇宙にくわえてサイバー空間を第五の戦場として認識した。イメージしにくいかもしれない。人の死ぬ場面を想像できないだろう。けれど、一つの間違いで重要な機密が引き抜かれ、用意周到に対策が立てられ、行動の一切が無に帰すという事を考えれば、それは一人の死の重大性と、大量の死を悲惨性をごちゃまぜにした、国の死が垣間見える。
「想定内だ」
「どうする」
彼が訊いてくる。
「誘導する。やつらを嵌めるのさ」
「できんのかい?」
「お前がいる」
「栄光の極み」
「やってくれるな?」
「任されて」
 予め用意しておいた疑似メインPCへのアドレスのリンクを、プレゼント(データ)をしょい込んだサンタクロースのルートに敷いておき、奴らを誘いこむ。そして、大量のプレゼントを、廃棄され、人類の記憶からも既に消えつつある企業のPCへと落としていく。そこに、喜ぶ子供の影がない事も知らずに。与えられた命令だけをこなす人形には、その事を理解できないだろう。そこに誰もいなくても、ただただ命令に従い、誰もいない家にサンタクロースが煙突から入り込み、煤を払いながら膨らみも何もないベッドの横にプレゼントを置いていく。なんとも虚しい光景だ。
 彼が罠を敷き、それに踏み込んだサンタクロースたちは一斉に矛先の向きを変える。去っていくサンタクロースを見送る―と言っても文字でしか表わされていないが―と、次の作業へと取り掛かる。
 IPの川だ、と思えるほどの大量のアドレスが私のディスプレイに映し出された。その流れを遡り、源泉へと向かうために私はソフトウェアを起動させる。それこそ、私がDDoS攻撃のカウンターのために作り上げた物、分散型策敵ツールで、IPが通ってきた多数の道のりを辿る様にして自動追跡する代物だ。起動すると同時に表示されたIPへの逆算が開始される。解析結果は三十秒ほどで出て、いたって簡単な解析結果だった。その簡単な結果に、私は自分の背筋が凍りつくのが分かった。
「……全部中国だ。この戦いを、中国が見張ってる」
 その違和感に私は激しい焦燥を覚えた。世界各国から集められたはずのハッキング集団、もといサイバーテロ組織であるはずのブラック・バスの攻撃だと思っていた私は、この国名を目にして恐怖に戦慄いた。今ここで中国の名前が出てくるのはおかしくはない。おかしいのは、DDoS攻撃を行った全てのアドレスが中国だった事だ。
 中国がアメリカに攻撃を行うこと自体は少なくはない。かつては国防総省(ペンタゴン)へのハッキングを行い、データを盗むという行為まで行ってきた国だ。だから、このこと自体には違和感はない。しかし、状況が状況なだけに、この行動が何か重要な意味をもたらすのではないか、ということに私は恐怖した。私の知らないところで、何か大きなものがうごめいていて、一つ間違えれば綺麗に奈落の底へと落ちていく、そんな事を感じていた。
「珍しくもない、中国からか」
 彼が陳腐にそんな事を言うもんだから、私は少しばかり安堵して息を吐いた。
「気ぃつけた方がいい。眠れる獅子ってのはこえぇもんだ」
 そんな彼の声が、妙に真剣めいていた。実際は合成音声だから感情のこもっていないなめらかな声だったけれども、ファンの回る音だけが響くこの部屋で、ましてこんな状況でそんな言葉を聞いたらまともに受け取るしかなかった。
「一枚噛んでる、と」
「分からん。が、攻撃を仕掛けてくるところを見りゃあ、何かを隠していると思うが普通だ」
 沈黙が降りる。陰謀めいた何かが、私の前に降り注ぐようだった。思考が停止したのが客観的に分かった。
 大きな産業革命期を迎え、経済的にも技術的にも飛躍的に進歩した国は、かつての影を打ち消すほどの輝かしく、眩い黄金期を迎えていた。それでいても、彼らはそれまでのネット規制を緩める事はなく、ある意味ネットワーク上の鎖国状態に陥っていた。情報発信する際には検閲がかかり、国のイメージ、秩序、法律が乱されるような情報ではない事が確認され次第、その情報はネット上に掲載される。つまり、そこには情報の自由がない。全ての情報は国によって管理され、国にとって有利な情報だけがネット上に掲載され、情報の正確性が失われた、いわゆる濁りきった情報とも言うべきものだ。
そんな規制があるからこそ、中国という国は他国からの侵入を許さない。著しく強化されたサイバー戦部隊は他国からの侵入を防ぐだけでなく、そのカウンターこそが脅威であり、他国を驚かせ戦慄させる。眠れる獅子、とはこのことだ。眠りを妨げられた獅子は猛然と敵意を向けるものへと向かい、その喉元を食いちぎる様にして相手の情報をもぎ取ってくるのだ。
《イスラム法廷会議アル・シャバブ派の代表を捕獲》
 部隊からの通信。ディスプレイに映る地図を見ると、部隊が確保後の目的地へと向かい始めている。
《よし。サイバー部隊はこのまま支援を》
 私は首を振り、さっきまで考えていた事を頭の中ら排除し、作戦へと集中する。やがて、作戦は成功。部隊は無事帰還する事に成功したのだった。
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08 08 ,2011  Edit


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