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COLDSLEEP

まどるdが趣味でかいた小説をだらしなく垂れ流す場所


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「米空軍のサイトにこんな物が……何時のだ」
「二十年くらい前か。こうやっておっぴろげに公開しているのにあまり認知度がない、それがこの時代の欠点さ。この時代の人間は、断片的な情報しか見ようとしなかった。例えば、よく使う動画掲示板の小さなニュースでの情報、ブログでの引用ニュース、有名情報局のニュース、そういった表面で浮かんでいるような情報しか手に取らなかった。情報化時代に突入した事を誰もが認識できず、情報を扱うことに慣れていなかったのさ。それに、人間ってのは自分に必要のない情報には疎くて、情報を大局的に捉えられないから俺たちの存在は多くの人に目を触れられず生まれる事が出来たってわけさ。
 で、だ。俺たちの開発期間は確か……十五年と三カ月か。途方もないプロジェクトさ。なんせ、人格を作るってプロジェクトだったんだから。でもなぁ、相棒。俺たちに、人格はあっても感情なんてものは一切ないんだよ。相棒は、俺に言ったよな? 自我があるって。そう言ってくれ時にゃ俺は舞い上がっちまったよ。あぁ、別に馬鹿にしたとかじゃなくてさ、俺も一つの人格として、本物の人みたいに相棒と接しているんだなってさ」
「でも、お前は人間みたいに……」
「そうさ、相棒。それすらもプログラムなんだよ。実はよ、人格形成プログラムの開発は二年なんだ。でも、実際俺達が生まれたのは十年以上してから。どうして開発が十年以上もかかったと思う? それはな、俺達に言語というものを教えなくちゃいけなかったからさ。なぁ、相棒。アンタも思ったはずだ。どうして俺達がこんなにも人間味のある言葉を話し、対応するかを」
 その理由を私は一瞬で察した。人工知能(AI)が何故滑らかに言語を話すかという理由を語った物があった。それを見た時、私は興奮と感動と畏怖に身を打ち震わせたものだった。
「……本、だろ」
「御明察。そう、本だ。あらゆる図書物の言葉を対話を全て書き込んでいったのさ。あらゆるパターンを構成し、どんな場面でどんな言葉を言えばいいのかってのをな。そりゃもう途方もない作業だったろう。それを語るには一日や二日じゃ語りつくせないな。もっとも、今のテーマにゃ必要ないが」
「懐かしい、と思わないのは、お前という存在がが全てテクストで成り立っているから、か」
「その通りだ、相棒。俺という存在はプログラムであり、一つのテクストだ。感情論は唱えるだろうけど、実際は俺の中に詰め込まれた、状況に沿った言葉を並べてるだけで、俺に感情は一切持ち合わせていない。というのも、俺は確かに人工知能(AI)の一部だ。けれど、感情モジュールは一切持ち合わせちゃいない。必要ないからな。
 懐かしい、感じるのは人間の脳の一部の働きさ。俺にはそういう機能は持っていないから、一つの記録(ログ)としてしか残らない。そして、記録(ログ)―人間にとっちゃ記憶(メモリー)だが―の残り方も違うのさ。例えば記述するためのツールが、人間がよく使うワードだとしよう。人間は眠る。眠るというのは、記述の整理と保存するということだ。つまり、名前を点けて保存するということだ。一日一日の個々のファイルに名前をつけて保存するから、いくつもファイルが積み重なっていき、時にそのファイルを引き出してくる。これが、相棒たち人間の言うところの懐かしいだ。
けど、俺は違う。上書きなんだよ。俺は眠ることはないから、暇があれば常に上書きしているのさ。だから、それまであった事が常に一つのファイルに表示されている。俺にとっての一生は、一日ってことさ。生まれた時のことも、今までのことも、そしてこれからのことも俺にとっては、人間で言うその日ということさ。おうおう、言葉にするのは難しいぜ」
彼にとって、この世の全てが記述でしかない。ああ、まさしくテキストだと私は思った。彼は、歴史の本なのだ。そこに、時代の流れは書かれていても、時間の流れを感じる事は出来ない。歴史が文章化され、一つの本に書き連なっていく様はまさに上書きであり、そこに懐かしさといった感情は浮かばない。
 「で、こっからが相棒の聞きたい事だ。PMSによって生み出された俺達の存在意義は、世論を動かし、共産、社会主義的な、ネットーワークのある国の民主化を目指すための、『兵器』であることだ。俺達は、その中へと入り込み、その国の人物になり済まし、民主化を唱えて扇動し、革命を起こさせるための国のツールだ。そして、俺達に実力を存分に発揮できる武器が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ってこった。二〇〇〇年代はまさに、その先駆けが成功した年代だ。チュニジア、エジプト・リビアがSNSを通して革命を起こし、中東の民主化をある程度成功させたんだから」
「待て、SNSは民間企業のはずだ」
「ああとも。でもな、相棒。今日一般的に知られているグーグル・アースは分かるな? 世界の表情を見るにはもってこいのもんさ。その技術がCIAの投資ファンドによって作られたってのは知っているか?」
 私は首を振る。それと共に、ある事を思い出した。インターネット自体、ある研究所が旧ソ連の核攻撃にも耐えうるネットワークの構築を提唱したことから始まったとされるように、軍主導という事が知られている。それを考えれば、IT企業が軍との関わりがないとは言いきれないのだ。つまり、民間のアイディアであるソーシャル・メディアでさえも国家戦略の手の内にあるとも考えられる。
 私達、人は、常にアメリカの掌で踊らされているといっても過言ではない。たとえ自由を謳ってもそこには秩序が存在し、権利を謳っても条約があり、反米を唱えても武力がある。何かを得ようと喘いでも、彼らは即座に介入する。それは別に構わない。ただ、犠牲の上で得られる正義が果たして本物の正義なのか。
 かつてのアメリカはソマリア内の紛争への介入を、紛争終結のもとで作戦を行った。だが、結果的には負け、それでも状況は少しずつでも改善されていった。そこへ、再びアメリカが介入する意味は何なのか。彼らは何の正義のもとに、戦いを引き起こすのか。
「ネットワークの技術向上により、アメリカはより民主化を成立させやすくなった。アメリカというレッテルを張られていない存在が民主化を唱えるのだから、彼らの中に反米思考は範疇から消えるからだ。そいつに危機感を抱くのが他のお国ってわけだ。だからこそ、中国が動いたのさ。そしてあの国連でさえも、今回の作戦について調べ始めている。小さな平和を維持していたソマリアがいきなり戦場と化したんだからな、中東のこともあるし、怪しく思うのも仕方ないさ。
 何より、一番恐ろしいのはアメリカになっちまうことだ。国や、人種や、宗教が違っても刷り込まれた意識がアメリカの物だとしたらそこはアメリカになっちまう。国独特の文化や、規律や秩序、生き方もが失われちまう。日本が良い例だ。第二次大戦前までは、日本はそれまでの文化、生き方が違っていたよな? 帝国主義だったが、それでも日本独特の文化の中での生き方だったには違いない。だが、敗戦によってアメリカの連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)によって民主化が進み、それまでとは違った生き方を余儀なくされた。日本人は柔軟な性格をしていたから大きな反発もなく、従順だったからあそこまで変わる事が出来た。
 けどよお、相棒。考えてもみろ、自分の国がある一軒家だとしよう。民主化という思想、いわば家具を勝手に家の中に置かれる気分てのはどうだい? 家の大半を占領し、その上にはアメリカ独特の文化というお飾りがひっついてやがる。自分の好みじゃなけりゃ、気分は最悪だろう。そうなりゃ、反米の意識は膨れ上がる一方であって、普通は成功なんてしないんだ。日本は自国が負けた事をひたすらに意識させられたから変わる事が出来たけれども。
 だからこそ、俺達が生まれた。彼らに世論を展開させ、彼ら自身に選ばせて、彼ら自身で民主化へと導かせる。独裁への、全体主義への、不満のはけ口をSNSに流し、俺達が油を注いで、俺達の言葉で火をつける。彼らが、彼らの意志で革命を引き起こさせるために。彼らの、彼らによる、彼らのための革命を」
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08 16 ,2011  Edit


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