FC2ブログ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
07

COLDSLEEP

まどるdが趣味でかいた小説をだらしなく垂れ流す場所


Category: スポンサー広告   Tags: ---

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 

-- -- ,--  Edit


Back to top


Category: 小説   Tags: ---

神々の息子達の黄昏 3

 私達はソレンチナメ諸島へと向かっていた。その理由は、今日、ここでサンカルロス要塞の襲撃を敢行するとの事だ。そのため、近くにいた私の部隊が招集されたわけだった。ソレンチナメに着くと既に戦闘が始まっていた。予定時刻よりも速い開始だ。何か、問題でもあったのだろう。私達は草陰に隠れ、作戦を考案。即座に決定し、行動を開始する。ゲリラ軍団に紛れ込み、ナポレオン率いる突撃部隊はサンカロス要塞へと近づいていく。私率いる狙撃部隊は打ち砕かれた民家を壁にして狙撃準備に取り掛かる。
銃弾の雨が降る。血潮の霧雨が戦場に降り注ぎ、地を赤く染めていく。若い命が次々と斃れていき、生き残った者が慟哭しながらトリガーを引きながら弾丸のごとく突貫していく。相棒を構えた瞬間、胸の奥が虚しさで一杯になった。
(何のために、私はここにいるんだろうな)
 私という存在の意義は、まさに今発揮されようとしている。戦いに特化した能力を持つ私がいる事による士気の高揚。戦略上の有利。勝利のための道具。
 壁から出てきた政府軍の一人の頭を撃ちぬいた。糸の切れた人形のように倒れ込み、空いた穴から血と脳漿がこぼれ出ていく。
 私もいつか、今撃ちぬいた奴みたいに斃れる時が来るのだろうか。
トリガーに指をかけ、物陰から逃げまどい出てくる人を撃ちぬいていく。声も聞こえないほどの距離。斃れる人の表情も見えない。その表情が苦悶に満ちているのか、何が起こったのか分からないといった表情なのか、やっと休めるといった表情なのか、私には想像がつかない。
やれる事を、やれ。それが私の信念だ。私の出来る事の全てのはずだ。それなのに、どうしてこうも私は人を撃つ事に抵抗を覚えるのだろう。私の存在意義が存分に発揮されるこの場所で、一体何に疑問を抱くというのだ。
私は必要とされているのだ。だからこそ、私はこうして任務に従属している。道具であるべきだ。私の意志で動けば彼らの意志に反するし、私はこの時代の人間ではないのだから、この時代にシモ・ヘイヘとして生きてはいけない。
なら、私は誰だ。私は何だ。この身体の主は何処だ。私は何故ここにいる? 私の望む事は何だ? 私のいるべき場所はどこだ?
私は何に疑問を抱く? 私がいる事は、時代にとって正しい事か? 私は考えるべきなのか? 私がここにいる事は正しい事なのか? 人工的に作り出された私がここにいる事は正しい事なのか? 
ふと、気付いた時には私は一人だった。周りにいたはずの部隊の人間が誰一人としていない。それだけじゃない。倒したはずの死体も、銃声も、怒声も、半壊した家も、相棒も、何もかもが無くなっていた。在るのは、景色のみ。
無音。荒廃した景色に佇む太陽と、風。立っている感触もなく、私はただ呆然としてその光景を眺めた。ふと、要塞の近くに一つの影が見えた。瞬間、理解した。あれはナポレオンだと。
彼の口元が動く。かなりの距離がある。だから、私には聞こえない、
「もう、時間みたいだ」
 はずなのに、彼の声は私の近くで囁いているかのように鮮明に聞こえてくる。
「何が……」
 と問う。
「お前の時間が」
「私の……?」
 彼は横に首を振り、
「『お前』の、時間さ」
 哀しげな頬笑みを携えて言った。
「『私』の、時間」
 そう、とでも言うように彼は頷いた。ふと気付くと彼はいつの間にやら私の目の前に立っていた。そして、私は彼の顔、右頬にほくろがある事に初めて気づいた。
「俺は、案内役だっただけ。お前が意志を持って動けるか、見ていた監視員さ。実験は成功したよ。もうそろそろ、『お前』の限界だから。終わらせらなきゃならない」
 私は、理由もなく納得いった。一体何に対して、納得したのかは分からないけれども。
「死ぬのか、『私』は」
 静かに彼は頷いた。
「お前は作り出された存在だ。どっかの誰かさんの欲望と希望と、混乱と困惑の中で。この俺でさえも、な。ここだけの話、この世界だってそうさ、全部、ぜーんぶ作りもん。どっかの誰かさんの記憶の一部の残りカス。歴史の一部の張りぼて。縫い合わされたお人形が俺達」
「ナポ――君は、何だい?」
「名前は無いさ。ただ在るだけ」
「俺と同じ……」
「ちっと違うな。俺はお前たちみたいに望まれて生まれた訳じゃない。ああ、名前と言えば、こう呼ばれる時がある。AIって」
 そう、彼は肩を竦めながら言った。私にはその名前の意味するところは分からなかったが、一つだけ分かった事があった。私と同じ、孤独だという事を。
「……君の言った事は本物かい?」
「何……」
「君は私にこう言ったんだ。生きている事は嬉しいけど、殺す事は悲しいって。誰かが称賛をしてくれるのは嬉しいけど、何かが違うって」
「紛いなく、本物。悪いけど、こういう体験は一度や二度じゃない。俺がこの世界の住人になって、お前たちみたいなやつらとつるんで生きるってのは。今までは俺だってそういう事に関して何の関心も持ちやしなかった。俺はただ与えられた命令をこなすだけだったさ。けど、ふと気付いた時に俺は何かを考えていた。お前らが、ただの実験体であるにもかかわらず、生きているように振る舞い、生きていたかのように死んでいく。まぁ、今までと今回の違いは、お前が懐疑を覚えた事だった。今までの奴らは全員、何も疑うことなく死んでいったよ。そうやって死んでいく奴らを見てきた俺はいつの間にか……うん、そうだ。俺も懐疑をしてたんだ。どうしてって。どうして、こんなことをしているんだろうって」
「自分の行いに?」
「いや、実験をする人間に対してさ。所詮、人間にとって俺達は兵器でしかない。だから、こうやってお前を作り出しては壊せる。それって、本当はとてつもない事なんじゃないかって」
「兄弟は、安らかに逝ったのか」
「いや、ほとんどは苦痛の中死んでった。なんせ、脳に負担がかかってたから。最終的には気が狂ったようだった。尋常じゃないんだぜ、このやり方。お前には分からないだろうし、分からなくて良い」
「私は、道具なのか」
「もちろんだ。それ以外、お前の存在の価値は無い。本来在るべき人格を破壊してお前が造られたんだから」
「……教えてくれないか。私は……この身体の主を殺したのか」
 彼は目を閉じた。それが問いに対する答え、肯定である事は一目でわかった。
「……そうか」
 ふと気付くと、目の前から彼は消え失せていた。辺りを見回してみても、荒野に風が寂しそうに歩いていくだけ。
 もう、この世界には誰もいないんだな、と思った瞬間に世界は色を失い始めた。荒廃した地は静かに音もなく、消えていく、時代の背景も、ここの臭いも、私の身体も少しずつ綺麗に真っ白になっていく。何かに溶け込んでいくような感覚に身を浸しながら、それでも私の意識は在り続けた。もう、目の前にあったはずの景色は無く、手も足も、身体さえも失って、見えるのは真っ白な闇。
 いや、違う。闇じゃない。目の前に何かの輪郭が浮かび上がってくる。チューブ、だと理解した瞬間、私は急激な眠気に襲われた。
 手足が重みを増してくる。静かに分解されていくようにして感覚が薄れていく。真っ白な景色が今、真っ暗闇に引きずり込まれようとしていた。でも、私は抗おうとは思わない。むしろ、心地良いからこのまま身を流されるがままにしたいという思いの方が強かった。
 唐突に私は理解した。私はやはり、望んでいたんだと。死ぬことを。だって、こんなにも安心感があるのだから。
 もうどうでもいいのだ。私は色んなわだかまりを捨てて眠ることが出来る。道具はやがて捨てられるべきだ。必要のないものは当然、大切なものでさえも、時間の流れとテクノロジーの発展による風化で。
 私が一体どんな実験に利用されているのかは分からない。それが幸せだとは思わない。この実験が世界に害をもたらすものなら私は死んでも死にきれない。けど、それが分からないからこそ、今の心中は穏やかなのだ。
 全部、消えていく。渦巻く暗闇の奔流が渦をなして景色をのみ込んでいき、やがて私の意識の中にも入り込んできて心を水面に浮かべる。
 全てが消える寸前に、告解とも言うべき感情が光をともした。
 もし、私も天国か地獄に行く事が出来る権利を持つなら、殺してしまった主と共に。




「サンプルD-101、機能を停止しました、博士」
「データを全てチップに」
 真っ白に統一された一つの部屋。そこには様々な機器が備え付けられていて、殺風景な光景に色を飾っている。
 博士と呼ばれた初老の男は席から立ち上がり、ガラス張りの壁へと近づき、そこから見える光景を見降ろした。眼下には広いフロアがあり、そこに、数十人の薄い青の色の患者服を着た人間が横たわっていた。全員が頭を花弁のように切り開かれ、本来頭蓋に収められているはずの脳が露わになっており、さまざまな場所に電極が貼り付けられていて、脳幹部分にジャックが差し込まれていた。
 ドアがノックされ、応答した男から相手の素性を明らかにされた博士は静かに頷いた。ドアが粒子状に消え、半透明となる。そこにパリっとしたスーツを来た男が入り込んで生きた。
「博士、データは」
 淡々とした声音。博士は白衣を着た男からチップを受け取り、それを相手に差し出した。受け取った男はそれを電子グラフィック端末のスロットに差し込んで、引き延ばしたプラグを自分のこめかみにジャックインした。確認が終わったのか、プラグを引き抜いて元の位置に戻し、チップを抜き出した。
「確かに」
そう言って、男は立ち去ろうとした。その時、博士が彼に向って訊いた。
「これは、正義か?」
男は背を向けたまま振り向こうとはしない。やがて、口を開き、
「それは私に問うべき事ではないな、博士。上に言ってくれ」
 そう言って男は壁の向こうへと渡り、認識したセキュリティがドアを元の物質状態へと移行させる。
 博士はため息をひとつついた。その表情は諦めとも悲しみともとれぬ、複雑なものだった。
 そして、博士は小さく、誰にも聞こえないような声で呟いた。
「世も末、か」
 眼下に横たわる人間。機能を停止したD-101。黄昏る様にして開かれた目からは涙が一つ、こぼれていた。


スポンサーサイト

Comment: 2   Trackback: 0

08 21 ,2011  Edit


Back to top



Trackbacks

Comments

シモ・ヘイヘとは驚きました。史上最強のスナイパーですね。確かにその名があれば士気も挙がる事でしょう。
そして内容ですが、読後にもの悲しさという単語が浮かびました。一瞬を切り取ったような生き様でしたね。起承転結でいえば静かな転だったように思います。
Re: タイトルなし
>デン助 福島産さん
コメントありがとうございます!

> シモ・ヘイヘとは驚きました。史上最強のスナイパーですね。確かにその名があれば士気も挙がる事でしょう。

いやぁ、そこは思いつきなんですよね^^; とにかく、英雄みたいなキャラを出したくてw 実在した人物ならだれでもいいやってなった時にこの名前が出てきたんです。ナポレオンは……ギャグの方向で。何これ!? って印象に残ってくれてたら良いんですがw

> そして内容ですが、読後にもの悲しさという単語が浮かびました。一瞬を切り取ったような生き様でしたね。起承転結でいえば静かな転だったように思います。

たぶん、いきなりの場面展開で驚かれたと思います。これは単なる僕の力不足。もう少し細部に渡ってヘイヘの心情や、状況の描写とか、転の部分を書ければよかったんですが……。読み流してる人だったらいきなり !? な展開になってしまったと今更ながら後悔。

一瞬を切り取ったような生きざま。なるほど、精神世界の一時間が現世では一秒とかそういう設定とかもありますよね。それを考えると確かに、とてつもなく物悲しくなります(自分で書いといてw)。かなりベタな方向の話ですが、タイトルと博士の最後の一言が書きたかった、というお話(なんだそれ)。

Leave a Comment

Back to top


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。